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このページについて

 ここは、座長「田Ko」(以後:私)のブログのようなページです。
過去作や、現在開発中の作品の四方山話を書きます。時々、お絵描きなんかも載せたりします。
また、私はここに、日記のような感覚で、その週の徒然たる話を書いていきます(こっちがメインかも)。
その足跡を辿れば、開発中の新作の姿が少しは見えてくるかと思います。

稀に、私の作品に共通する、私の世界観なども書いていく予定ですので、
意外と重要なページになあるかもしれませんね。

まぁ気楽に、暇つぶし程度に、読んでいってくださいな。
...タイトル名称の読み方は「にちにち これ きにち」です。あんまり語感は良くないねぇ。

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タイトル「閉塞、因果、そして気の違い」
<記述日:2025年06月29日>

本ページをご覧の皆さま、こんにちは。座長の田Koです。
少々遅れましたが、一応土曜の深夜ということで許してください。現在26時です(笑)。
学校のカードキーを持っているので、蒸し暑い寮を抜け出して避暑しております。
おかげで今日は長々書けるかなーと思う。別に長いのが良いわけでもないが。

最近はゲーム開発も行いつつ、私生活の大半を読書に費やしております。
クーラーを程よく効かせた研究室に泊まって、書淫に耽る(というのは大袈裟ですが)。
何を読むかというと、作家・横溝正史の小説です。つまりまぁ金田一の探偵シリーズです。他にもありますが。
果たしてまぁ、ここまで面白い文章を書く人も居るのかと、読むたびに感嘆を禁じ得ません。
そこで今回はそちらのレビゥをしていこうかなと思います。ネタバレはなし。かな。

八つ墓村

まずはこちら。金田一耕助ファイルの大名作『八つ墓村』。
憎悪と疑心に満ち溢れた村を襲う一連の惨劇を描きます。
金田一シリーズの名作でありながら、金田一耕助の活躍の場は意外と少な目と感じます。
それもまぁ当然で、本作は主に第二主人公というべき人物にスポットされています。金田一耕助はお助けのサブキャラみたいな立場です。
しかし本の厚さはシリーズの他作品と同じくらい。金田一の喋らぬ所で、これでもかというほどに「八つ墓村」の忌まわしさを語ってくれます。
本作はやはり、元ネタとなる事件があることで有名ですね。詳しくは省きますが、
とある気違いが、叶わぬ慕情の為に発狂し村人を無差別に襲ったという事件が実際にあったわけです。
歴史に残るその犯人像と、作中のとある人物の描写がもはや同一人物。故にこの作品は、忌まわしい連続事件が如何に非現実であろうと、
決して我々を逃さぬリアリティを以て、終始語られるのです。
舞台設定に関しては、まぁ、言うまでもなく「寒村系」になります。 寒村系の「あるある」はここから始まったんじゃないかな。
そう思うほどに、現代創作人への影響力が大きいと思われる作品でもあります。

村を牛耳る大金持ちがいて、忌まわしい血族がいて、なんか知らんけどクソデカの地下洞穴があって...
現代の寒村系を楽しんでる人なら、まず間違いなくこの作品は刺さるでしょう。というか結構『鬼太郎誕生』です。 そして何より、エピローグの最後ですね。あれは私のようなラブコメ中毒者は思わずにっこりすること間違いないでしょう。

悪魔笛

そして次、『悪魔が来りて笛を吹く』という作品です。
とある貴族(時代的に貴族院になってるか)の親族を取り巻く忌まわしき因果と呪いの作品です。
本作は、「これから書く文章は書くのも憚られるほどに忌まわしい」というような、ある種の注意書きから始まります。
金田一耕助目線で「忌まわしい」という表現は、主にに倒錯した肉体関係に当てられる言葉です。
よんでみるとまぁ、注意書きもあるように、何とも「忌まわしい」。
爛れた関係の間に生まれた悲しき因果の形。そこに加わる各個人の貴族のプライド、底知れぬ使用人の囁き声。
終始誰が見方で誰が敵かも分からない、もしかするとこの作品には見方などいないのかもしれない。
読者の推理を悉く丁寧に嘲るように潰していく、果たして最終盤面まで、正しい推理を金田一耕助以外に許さない。極めて優れた探偵小説だと思います。
しかし、話は特に入り組んでおらず、終始当然の流れの上を辿りながらスムーズに終わりを迎えます。入り組んでるのは肉体関係くらいか。
そして最後は、犯人の自白文で終わるあたり、やはりどこかアガサ味を感じる。誰もいなくなったわけでもないですがね。
タイトル回収も終盤です。「なるほどなぁ」と、探偵物語としては後味すっきりです。

獄門島

こちら、『獄門島』という作品です。タイトルのワクワク感が半端ではありません。
瀬戸内海に浮かぶ島で、かつて瀬戸にはびこった海賊の残党の末裔が多く住むと言われている島であり、
また、かつての流刑地として知られる島です。つまり作中でこの島に住む者は殆ど皆、
海賊か罪人、その血を受け継ぐ者であります。その悍ましさから何時しか島は正式名称の「北門島」から訛って
「獄門島」になったとされています。また、排他的なシマ社会で半ば当然のように繰り返された近親婚により、
今や島民はほぼ何かしら親戚のような関係で結ばれているという気違いじみた設定もあります。
さて本作の殺人はいつもよりも小規模といえば小規模です。しかし、何の因果で誰がこれを行うのか、
これが全くはっきりしません。その壮絶な最後(破局、と言っていいかもしれない)を見るまで、読者は部分的な推測をするほかないのです。
本作は特に「集団」に焦点を当てられ、集団の特徴を前面に押し出したような作品です。
また、時代設定は第二次世界大戦の直後であり、少なからず、戦争への批判が込められた作品でもあります。
本作の犯人の意志には驚かされる事間違いなく、また本作の最後に待つ展開は、少なからず読者を
澱みに満ちた鉛のような重厚な余韻に、深く深く浸す事でしょう。

髑髏検校

さてこれは、金田一耕助シリーズではないですが、『髑髏検校』という本です。
この本は私が初めて読んだ横溝本で、内容としてはズバリ「日本版ドラキュラ伯爵」。
雨の降る夜に雷鳴と共に現れ、何者かの血を抜き殺して去ってゆく謎の存在、
鈴虫と松虫という妖しき美女を侍らせ、威風堂々と怪異を成す存在はいつしか髑髏検校と呼ばれるようになった。
そんな大妖魔相手に、稀代の天才蘭学博士が立ち向かう、という、ゲームにしたいようなワクワク設定です。
探偵小説に苦手意識がある人でも、これだけは読んでほしい横溝本、と本気でお勧めできる、大人のファンタジー小説です。
そして最後に明かされる検校の正体、それに対する驚きは大きい事でしょう。是非に!

これくらいにしておきましょう。因みに今は「犬神家」を読んでいる最中です。
横溝氏の本は、その結末へ至るまでの導線をしっかりと敷きつつ、彼の全知識を総動員して
色彩を加えているため、読めば読むほど、氏のクリエイターとしての鬼才を感じることができます。
日常の全てをネタにできるような目を持った方だと思います。また、その知識欲の深淵なることはその底が知れません。
偉大なる創作者に最大限の敬意を。そしてこれからも楽しませてください。ありがとうございます。
優れた幻想は現実の枚挙から。田Ko
<次回更新予定日:2025年07月05日(Sat)>