この世界の人類が、愛してやまないもの「お菓子」。
和洋様々存在するそれは、甘美かつ刺激的な魅力を以て、私達に安らぎを与える。
大福、ビスケット、チョコレート...枚挙に暇がない「お菓子の世界」の住人達...
さてこれは、私たちの住む「この世界」とは別の場所にある、「お菓子の世界」の物語。
東西のお菓子がまだ、互いを憎み合い、交わることのなかった時代の物語。
「西国」との緊張状態が続く中、今日の曙を迎えた「東国」、
その安らぎの時を打ち砕くが如く、突如、「西国」の大規模侵攻が始まった。
城下町を囲う堀の彼岸を見渡せば、西国騎士の剣が地平を覆う。
東国の兵は刀剣を携えて防衛に奔走し、民は城へと避難するのに必死だ。
そんな中、13歳の、大福屋の看板娘「福持 苺子」は、近づきつつある西国兵の剣の山を見て決心した。
「今度こそ、皆無事では済まない。誰かが平和の心を持って、話し合いで解決しなきゃダメだ!」
人波に逆らうことはできないと悟り、彼女は城へ行き、堀の外へ続く地下洞穴を目指した。
彼女の決心は、両国の運命を動かすのだろうか。
そして、この戦争が醸す、甘美なる血の香が招くのは、勧善の天使か、或いは...
この世界の「当たり前」に隠された、奇跡の長編ストーリー第1弾、
さぁ、甘い甘い大戦争の幕開けだ!!
種族:人間
菓子種族:大福,餅
「東国」でも由緒ある老舗「福餅亭」の看板娘。
ほんわかした性格で、どんな悪ガキも彼女の前では骨抜きになるという。
お店の名物である超巨大豆大福の「DAI福」は、まだまだ修行中。
このように、基本穏やかな性格の彼女だが、争いごとには誰よりも強く反対する。
この性格は、国の兵団を束ねていた父の影響が大きい。
彼女は生まれて間もなく母を病で亡くし、それからは父と祖母に育てられてきた。
大のお父さんっ子だったが、2年前、彼女が11歳の時、前回の西国侵攻にて不運に見舞われ、
部下の兵を逃がすために、自ら囮となって敵陣で命を落とした。
その時彼女は、この因縁を断ち切るという志を抱いた。
種族:人間
菓子種族:水飴
「東国」で人気の水飴屋「清水菓子店」の若き店主。
様々なお菓子を仕入れて販売する駄菓子屋だが、自家製の水飴は、安くて美味いと大人気である。
苺子とは幼馴染で、彼女のことを良く知っている。
争いを止めるため、苺子が密かに、この地下洞穴、基い「秘密基地」に来るのも、お見通しだった。
彼女は、苺子ととても仲が良いが、唯一、東西対立の考え方は、専ら対局で、
彼女は、一方的に攻め入ってくる西国への敵意識がぬぐえないようだ。
「次の侵攻が始まって、苺子が城にいなかったら、間違いなく、危ない状況になる。」
城へ避難した彼女は苺子を探し回ったが、どこにもいない、
カンが当たったことに絶望しつつ、苺子を想うが故に、彼女もまた、地下洞穴へ向かった。
種族:人間
菓子種族:ビスケット,クッキー,クラッカー
「西国」の王家「ビスキュート家」のお姫様。
厳格な父(西国王)の教えで、幼いころから騎士道を学んでいた。
故に、剣の腕は確かであり、また、兵たちの統率力も高い。
今回の侵攻は、父の命により彼女が指揮を執っていた。
しかし彼女自身、東西対立の歴史には疑問を持っていた。
父をはじめとする王宮内の大人たちから、半ば強制的に聞かされた恨み節。
しかし、その恨みの理由を聞くと、皆だんまりである。
どんな歴史書、はたまた昔のファンタジー小説にも、その手掛かりはなかった。
彼女はこの侵攻を止めてくれる「何者か」を、密かに待っていた。
種族:人間
菓子種族:チョコレート
東西どちらの国にも属していないという、腕利きの殺し屋。
この侵攻では、西国王に雇われた暗殺部隊の長を務めていた。
心身の脱力を感じる言動だが、それ故に隙を感じさせない強者感が滲んでいる。
彼女は、貧しい国の生まれで、父はおらず、母はカカオの大農園で働き、彼女を養っていた。
しかし、当時その国は、支配を広げる強大な国家の支配下にあった。
ある日、いつもよりも帰りの遅い母の心配をし、母の働く農園へ忍び込んだ。
そこで見たのは、地に蹲る母と、それを見下し、罵る者たち、
意識の一瞬の遠退きを感じ、次の瞬間、彼女は血だまりの中にいた。
そこに溺れ、なおも動かぬ母の上に落とした涙は、嗚咽するほどの甘みを帯びていた。
種族:虫,上位悪魔,堕天使,邪神の偶像
太古、この世界に突如現れ、暴虐の限りを尽くした後に、封印された厄災。
その当時、東西のお菓子は共和国を築いており、互いの仲も良かったようだ。
しかし、彼女の降臨は、終末論の在り方をめぐって、東西に思想的対立をもたらした。
これが、東西対立の発端である。
彼女は、東西の境界地域の地下深くに、かつての共和国の旧都「シドン」もろとも封印されていた。
しかし、今回の大侵攻により入り混じった、東西の菓子の甘美な香りが、
「暴食」の悪魔である彼女を長き眠りから解き放った。
大地が震え、旧都の真上にあたる大地が音を立ててひび割れ始めた。
かつて彼女を封印した英雄は、東と西の少女2人だったという。
苺子とビスキュートは、東国の地下洞穴から、封印されし廃都へと向かった。