先の大戦争から、はや5年を経た今日。
東国と西国は、手を取り合い、共和国となり、「和洋折衷」を掲げていた。
恐らくこのまま、共存の道を順調に歩み続け、過去を忘れられる日が来るのだろう。
新たに作られた王城のテラスで、苺子とビスキュートは微笑んでいた。
彼女らは、先の大戦を無血の内に終わらせた英雄と称えられ、
幼くも、東西の兵団を束ね、「平和」を象徴する存在となっていた。
しかし、その平穏は、突如揺らぐことになる。
国のいたるところで「東西再分離」を叫ぶデモが発生した。
デモ隊は互いに合流し、やがて悍ましく揺らめく塊となって王城に近づく。
1人の叫びはやがて、大衆の狂騒となって国を覆う、苺子は、かつての光景を幻視した。
2人はデモ隊の抑制を兵に任せ、自らデモ隊の中心へ突入することを決めた。
話し合いでしか、この国の誇りは守られない、過去の栄光、掴み取った平和を、壊すわけには行かない。
この国で、一体何が起こっているのだろうか、
訪れたはずの平和は、一時の幻想だったのか、信じていた平和は、今その形を変えたのだろうか。
神は今、得体の知れぬ邪心を以て、彼女たちを試そうというのだろうか...
甘美なるキャンバスに、戦禍の澱みを壮大に描いた、
現実世界に肉薄する重厚ファンタジーストーリー第2弾!
種族:人間
菓子種族:大福,餅
5年前の大戦を無血にて終結させたとして英雄視されるようになった苺子。
今は王城で東国の兵を束ねているが、彼女の性格からか、兵たちに緊張感はない。
しかし、兵たちに常に優しく接する。兵たちは躍起になって自主的に鍛えるため、訓練の必要もなくなってきたようだ。
もっとも、敵だった兵たちが、今や味方となると、争う相手といってもピンとこないのだろう。
実家である大福屋を祖母から正式に継ぎ、今では町のアイドル若女将だ。
国中の全ての民から愛されているが、本人は全くそれを気にしていない。飴利曰く「罪な女」。
彼女からすれば、昔から続けていることをやっているだけなのだ。
ビスキュートとは大の仲良しになった。彼女は西側の兵を統率している。
兵団のトップ同士が親友ともなれば、今後、あのような争いは起こるまい。彼女達は平和の象徴なのだ。
種族:人間
菓子種族:ビスケット,クッキー,クラッカー
5年前の大戦を無血にて終結させたとして、英雄視されるようになったビスキュート。
今は王城で西国の兵を束ねており、苺子とは違って、騎士道を重んじる兵らしい兵である。
しかし、にじみ出る優しさが兵たちを虜にし、躍起になって自主的に鍛え出したため、最近訓練の必要もなくなってきた。
明確な争う相手をなくした今、彼女をはじめとして、兵たちは国の防衛に全力を注ぐ。
ビスキュートが停戦を持ち掛けた時、父は以外にもあっさりとそれを了承したようだ。
どうやら、西側は昔から「厄災」の終末論が根強く、ほとんどの国民が無意識的に東国を目の敵にしていたという。
王である彼女の父も、彼女同様に、自分の言動に疑問を持っていたのだろう。
愛する娘の申し出ならという気もあったかもしれない。
何はともあれ、あの大戦を終わらせたのは、彼女と苺子である。彼女達は平和の象徴なのだ。
種族:七夕の精霊,昇魂精
菓子種族:索餅など
苺子がデモ隊の中で出会った不思議な少女。
デモに積極的なわけではないが、東西の菓子が混ざり合うという事に対する疑問は抱えているらしい。
デモ隊に一応参加しているからと、苺子を止めるために戦闘を始める。
なお、とても弱い。デモが行われたこの日は、彼女のテリトリーではなかった。
その正体は「七夕の精霊」である。お菓子の世界では「お菓子に関連する行事」の精霊も時々見受けられるという。
普段は雲の上に住んでいるが、今日はたまたま「西側の友達」と一緒に下界観光に来ていたという。
彼女の仕事は「幼い霊魂の道案内」らしく、7月7日の夜に、下界で迷子になっている魂を道案内している。
また、橋建設のプロだという。この仕事も、7月7日に行われるようである。
「たった2人の為に橋を架けて、しかもその日中に壊すのが仕事。運河建設よりブラックだよ、私のとこは。」らしい。
種族:ハロウィンの精霊,降霊精
菓子種族:キャンディーなど
ビスキュートがデモ隊の中で出会った不思議な少女。
望半同様に、デモに積極的ではないが、東西の菓子が混ざり合うという事に疑問があるという。
デモ隊に一応参加しているから(あとちょっと好戦的なの)と、ビスキュートを止めるために戦闘を始める。
なお、とても弱い。デモが行われたこの日は、彼女のテリトリーではなかった。
その正体はハロウィンの精霊」基い、「サウィン祭の精霊」。
普段は雲の上に住んでいるが、今日はたまたま「東側の友達(望半)」と一緒に観光に来ていた。
彼女の仕事も「霊魂の道案内」だが、望半とは違い、10月31日に天上の霊魂を下界に降ろす役目である。
しかし近年になって、ハロウィンという行事の形骸化には、少し腹を立てているようだ。
「私たちの業界では、『シブヤ』は呪いの言葉になっちゃってるわよ。」らしい。
種族:人間
菓子種族:抹茶
今回のデモを指揮する一児の母。
我が子の身を案じ、メガホン等での絶叫は他に任せ、1人、デモ隊の中心にいた。
華奢な雰囲気であるが、その眼光と冷ややかな声音は、大戦の英雄すらたじろいでしまうほどである。
今回のデモは、彼女にとって重大な意味を持っていた。
東西が共和国化したのち、急速に増加したのが「混血」である。
彼女も、東国の生まれでありながら、西国の者と恋に落ち、子を授かった。
しかし、過去の因縁から、そういった者たちに対する「差別」があった事は事実であり、
彼女の夫は、1年前に、東国の暴漢に襲われてこの世を去った。それを機に、彼女はこのデモを計画し、
今日それを実行した。夫の無念と、わが子の将来を抱きかかえて、「英雄」に向け刃を振るう。
種族:花の妖精,邪神の偶像
突如、国の上空に広がった暗雲の中心にいた謎の少女。
彼女から滲むオーラに当てられたものは、どういうわけか、溶けるように崩れてしまう。
彼女が司るのは、お菓子の世界の住人たちが最も忌み嫌うもの、「腐敗」の力であった。
かつては、「別の世界」にて生まれた一輪の花の精だったようだ。
しかし、彼女の花は咲くことができず、無念のうちに、身体の腐敗が始まってしまった。
しかしそこに、「神」が降り立ち、腐りゆく彼女にこう告げた。
「今、お前を苛むその力を、お前に授けよう。そなたはその力を以て、我が神威の一部を担うのだ。」と。
そして、堕とされたのが「お菓子の世界」である。
その時彼女は、この世界に住む者の心にある「負の感情」を腐らせ、増幅し、
この世界に混沌をもたらすことが、己の使命であると悟った。